発症は2006年の5月、44歳のときでした。
指の付け根が腫れ、おかしいなと思って病院に行ったら、「リウマチの疑い」と診断されました。
そのとき「リウマチ」について知っていることといえば、「寒くなると痛む」、「年よりがなる病気」（笑）と、そんな乏しいイメージでした。なんかの漫画（アニメかも）にも、年取った、皺くちゃのおばあさんが「リウマチが痛んでねえ」というシーンがあったような。自分もそんな年になってしまったのかとショックでした。
その日のうちにネットで検索。リウマチは「おばあさんの病気」ではないということを知りましたが、代わりに、たいへんな病気だということもわかりました。「激しい痛み」「一生治らない病」「関節破壊」「寝たきり」・・・そんな症状のフルコースが頭の中に一気になだれこんできて、パニック状態になりました。
1週間後、血液検査の結果で「リウマチ」が確定。「一生つきあっていくしかない」と、大学病院の超まじめそうな医師にいわれました。でも「2割ぐらいの人は治るんですよね」と反論してみると、「あなたの場合はリウマチ因子とCCP抗体の両方とも陽性なので、治る可能性は低いです」と。逆に、CCP抗体がプラスの人は「99％悪化する傾向があります」といわれ、数値をたてに呪文をかけられた気分。かなり落ち込みました。
そんな衝撃的なリウマチ生活のスタートだったのですが、そのあと2年間はおだやかに過ごしました。主だった症状は指の腫れと、足の裏の痛み、左手首の痛みぐらい。痛みもときどき感じる程度でそれほど気にならず、病院に定期的に検査に通いながら、薬なしで過ごしました。
2008年1月、指が腫れや痛みが続いてきたことで、先生に「そろそろ投薬治療をはじめましょう」といわれました。最初はアザルフィジン、5月からはリマチルの1日2回の服用です。
血液検査の結果は、薬を飲む前も、飲みはじめてからもほとんど変わらず、CRPが0.03以下、MMP-３も正常範囲内。リウマチ因子は20～50。「朝のこわばり」も経験したことがなく、数値や症状だけをみれば「寛解」状態でした。それで自分はきっと軽いタイプのリウマチなのだと思い、こんな調子でいくなら、リウマチ楽勝！、薬を飲み続けてもいいやとさえ思い始めていました。
軽く考えて過ごしてきた私が、あらためてリウマチを考えさせられることになったのは、発症して4年経った2010年のこと。左手首の痛みが少し強くなってきたので、超音波検査をすることになり、その結果、かなりの炎症があると判明。レベル3から４（レベル４が最高）だと診断されました。また、レントゲン検査で手首の軟骨がなくなっていることもわかりました。その頃は、左手首が曲がらなくなっていたのですが、左手だったのあまり気づかなかったのです。
痛みもなく、CRP値も低いのに、骨が破壊されることがあるのかときくと、「まれにそういうサイレントタイプの人もいます」と、先生の淡々とした回答。私はリウマチを（そして先生の呪文を）まったく甘くみていたと、愕然としました。
2011年、リウマトレックスの服用開始。最初は4mg、少しして6mgから8mgとだんだん量が増えていきました。量が増えるたびに、このままでいいのかなという思いと、でも仕方ないやという思いが行ったり来たり。誰にきいても「リウマチは不治の病」というし、「治る」なんてありえないと思いこんでいたのです。
リウマチ感謝さんの本と出合ったのは、このころでした、本を読んだときの感想は、正直、さめていました。「ふうん、そうやって治った人もいるんだね」ぐらいに。きっとリウマチ感謝さんは、もともと治るタイプ（？）のリウマチだったんだろうな。自分とはちがう。なにしろ先生から「必ず悪化する」というお墨付き（^_^;)をもらっているのだから。そんな思いで読んだのを覚えています。
一方で、それでもなにか方法はないのかと、免疫療法に通ったり、鍼灸院や整体院に通ったり、漢方を飲んだりして、いろいろやってはみました。でも、どれも顕著な効果がみられず、お金ばかりかかるのでやめました。
そしてずるずると薬を飲み続け、気がつけばリウマトレックスは12mgに。薬があまり効いてないのか、右指も腫れ出し、2012年には、生物学的製剤も勧められました。このままだんだん強い薬に移行していくことに、漠然とした不安を抱き始めたとき、ふと、前に読んだリウマチ感謝さんのことを思い出し、思い切って電話カウンセリングを受けることにしました。
電話カウンセリングでは、元気いっぱいの千春さんの声、ていねいな説明、わかりやすいアドバイスになんだか急に視界が明るくなった気がしました。治るかもしれない、と思い始めたのはこのときからです。
それからセミナーも何度か参加させていただきました。実際に治っている人がいるというのは、ずいぶん励みになりました。リウマチ感謝祭にも参加して、今まで暗いイメージしかなかったリウマチが、明るいイメージに変わりました。断薬から完治、自分にもできるのではないかという気持ちがだんだん強くなってきました。
2013年9月、「必ず悪くなる」と私にいった先生が、病院をやめました。なんだか呪縛がとけたような気がして（笑）。担当医がかわったことをきっかけに、病院通いと薬をやめることにしました。
断薬とともにはじめたのは、半身浴、11時就寝、朝の呼吸法と瞑想、パンや菓子類をやめ、野菜中心の生活。砂糖の入った飲料水をやめ、水をたくさん飲むこと。クエスト社のサプリメントも飲みはじめました。
今まで、免疫療法も鍼も整体もうまくいかなかったのは、人に治してもらおうという姿勢が問題だったと気づき、今回は代替治療は選びませんでした。自分のからだは自分で治すしかないと。
薬をやめて1か月はなにごともなく過ぎました。1か月を過ぎたころから、右手首が動かなくなり、次に肩が痛くなりました。重たいものだけでなく、軽いコップさえ持てなくなりました。握力がまったくなくなり、ペットボトルも開けられなくなったのにはショックでした。足も腫れて、歩くのが辛くなりました。「こわばり」もはじめて体験しました。朝だけでなく、夕方もこわばるようになり、電車で座ると固まってしまい、立ち上がれなくなったのには困りました。
どれも、リウマチと診断されてからはじめての経験でした。効かないと思っていた薬は、実は意外と効いていたのようです。薬のおかげで隠されていた、本当のいまの自分の状態を知ることができました。自分の身体は、ほんとうに病んでいたのだなあと。
いろいろな症状が一気に吹き出してきて生活は不自由になりましたが、これが過ぎれば快方に向かうのだと思うと、あせりはありませんでした。またリウマチ感謝さんの電話カウンセリングを受け、いろいろ励ましてもらったことも大きかったと思います。「薬をやめて2～３か月ぐらいがピーク」と聞き、とにかく身体によい生活を心がけて過ごしました。
明けて2014年、症状はあまり変わらず。朝こわばるので、瞑想はやめて、その時間にお風呂に入ることにしました。お風呂の中で、アファメーション「自分は治るんだ」という瞑想を続けていました。
2月になっても症状が変わらないので、ちょっと不安になりました。イメージが足りないのだろう思い、「リウマチは治る。元気になる」という言葉を声に出して唱えたりもしました。でも、あるとき、ふっと、「あれ、私、毎日リウマチが治ることばかり考えてる」って気づきました。それを考えている自分って、はたして身体に「いい状態」なのかなあって。
それで、リウマチのこと考えるのを一切やめてみようと思いました。治っても治らなくても、どうでもいいや。今、この瞬間、痛みがなければいいじゃない。そう思うようになり、痛みが出たときは「ありがとう」って唱えながら痛みが消えるのを待ち、痛みが過ぎたらリウマチのことはすぱっと忘れる。そんなふうにして、冬の間を過ごすことにしました。
3月になっても、あいかわらず肩は痛いし、腕は動かない状態でしたが、少し変化がありました。なんか調子のよい日がぽつぽつとあらわれ始めたのです。調子がよかった次の日は、また調子が悪くなりの繰り返し。でもきっとよくなっているんだろうと思って、調子のよい日は散歩に行ったりして身体を動かすようにしました。
4月になると調子のよい日の方が増えてきました。肩に鞄を下げられるようになり、重い荷物も持てるようになりました。
本格的に変わったなと思ったのは4月に風邪をひいたあとです。風邪で熱を出したのですが、熱がひいたあと、身体がとても軽くなったのを覚えています。
それからはどんどん良くなっていきました。できなかったこと、ペットボトルがあかない、フライパンが持てない、正座ができない、などが、またひとつずつできるようになっていく過程は楽しかったです。
「リウマチは楽しく治す」というのは、本当にそうだなって思いました。
リウマチのおかげて、いろいろ気づいたことがありました。
発症のきっかけは、長年の不規則な生活、食生活の乱れ、睡眠不足。そのうえに、2006年の結婚でした。お互い若くない同士の同居生活はストレスが多く、うまくいかないことばかりが続き、自分でも今までの人生の中でこんなにストレスを感じたことはないと思っていました。それと、年齢的なことも加わって、リウマチという形になったのだと思います。
リウマチだとわかったときは、すごく落ち込みましたが、自分をみつめ直すきっかけにもなりました。それまで漠然と毎日を過ごしていたのが、リウマチになり、いったんは未来が閉ざされたような気になりました。それなら、いまを大切に生きなきゃという気持ちに変わり、さらにいま本当にやりたいことが何なのかがわかったのです。これはリウマチになったおかげだと、心から思っています。
リウマチだと診断されたときも、今も、夫の態度は変わりません。結婚当初からマイペースな夫に、自分がかってに怒ったり落胆したりしていただけだとわかり、今ではあまり動揺しなくなりました。今は、ふたりでベストな関係を築いています。これもリウマチのおかげかもしれません。
リウマチに出会えたこと、そして、千春さんと出会えたこと、希望をあたえてくださったこと、ほんとうに感謝しています。ありがとうございました。
実は今はまだ手や足に腫れが残っています。朝のこわばりもあります。リウマチ卒業というのも、少しためらいはありました。
最近、また少しずつ生活に乱れが出てきて、食事もいい加減になったり、睡眠時間が十分にとれなかったり。そうすると、リウマチ症状がまたぶりかえしてきます。ちゃんとやってくれよって、いっているみたいに、警鐘をならしてくれるようです。それで、ああ、自分のからだのことを疎かにしてはいけないなって気づかせてくれるみたいです。
断薬した当初の気持ちを忘れないためにも、卒業宣言をすることにしました。
【神奈川県 Ｔ．Ｋ．さん 2015年8月30日記】
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